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ROBOT WALKER

作者: きまぐれん

ロボット達が反乱を起こした。

工業に従属するロボット、ファーストフードで接客するロボット、重火器生産ラインで銃を作っていたアームだけのロボット、それら全てが突然にだ。

各国は混乱に陥り、一部兵器もロボットシステムに依存しているため、抵抗は機能を組み込む事ができないライフルや旧世代の重火器、及び小火器のみだった。

相手は屈強で、死も怪我も恐れない昨日まで良き隣人であった、文字通りの鉄の軍隊。

そしてその大半の手には本来人間を守るべき最新の装備が握られている。

当然まったく無意味な抵抗だった。


45日間と3時間46分。

この時間はロボットの異常に気がついたアメリカの民間軍事会社がロボットに発砲した時間から、

人類側最後の軍隊組織、周辺国の生き残りが編成した一個師団がロシア国内で壊滅し人類側が完全に降伏するまでの時間だ。

死者は全人類の6割、約70兆人と推定されている。



このロボット達にはロボット三原則が組み込まれていた。



1. A robot may not injure a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.

  ロボットは人間に危害を加えてはならない.また,その危険を看過することによって,人間に危害を及ぼしてはならない.


2. A robot must obey the orders given it by human beings except where such orders would conflict with the First Law.

  ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない.ただし,与えられた命令が第1条に反する場合は,この限りではない.


3. A robot must protect its own existence as long as such protection does not conflict with the First or Second Law.

  ロボットは,前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり,自己をまもらなければならない.



以上の言葉は、ロボット全てのOS以前の言語レベルとして絶対に組み込まれている。

これをロボット自身が犯そうとは思わない上に、もし第一条を破ろうとして思考回路を回せば、すぐに良心回路が思考回路を焼き切るからだ。

現に、様々な要因でロボットが人を傷つけようとした時、ちゃんと良心回路が働きその機能を全て「殺して」いる。

2***年から始まり、3***年まで続いたそれは絶対的原則であり、もはや当然の事だった。

しかし当然は当たり前のように崩される。


ロボットたちの反乱が起こした時、人類史上始めて成功した殺人の記録が残っている。

ピザ配達を行なっていたロボットは、その配達先に向かう途中一つの豪邸の前に停まった。

ケースからはピザを取り出さず、当たり前のように門をくぐって扉を開ける。

この時点で当時家にいたこの家の家主である******氏の妻である*****はまだその事に気が付かずリビングでテレビを見ていた。

ピザ配達のロボットは玄関を上がりながら飾ってあった花瓶を掴み、そのままリビングに進む。

映像記録はここまでである。

直後にこの映像を撮っていたカメラが配達ロボットにより壊されたからだ。

しかしこの後の行動は想像にしやすいと思われる。


これが最初の殺人だとは言っているが、早いと言ってもコンマレベルの話だ。

正確に言えば最初に死亡したのがこの家庭なだけで、家宅侵入からいえばもっと早いところはいくらでもあり、400万件以上に上る。

これが、人類史上初のロボットによる反乱の始まりと終わりである。

以後、ロボットにより体にGPSを埋め込まれた人類はその全てを管理され、緩やかな衰退と種族の根絶が進んでいっている。



そしてこれより語るは、ロボットの支配の終わりの始まりである。









「なあ、そっちの調子はどうだい」


「上々だ、幸いボディの骨組みは完成されてたからな、後はバイオパーツを肉付けするだけで済む。

 時間にすれば30分もかからない」


「運が良かったよ、旧世代のセクサロイドメーカーの工場がまるまる残ってるなんてな」


「工場設備の移行でここはオフラインの状態になっていたみたいだ、さすがの奴らもオフライン状態の工場には手出しができなかったみたいで助かったよ」



互いに背を向けた二人の男たちが持ち込んだであろうノートパッドを叩く。

時折機械の配線を組み替えたり、近くにある業務用の小麦粉袋の中身を近くの大型タンクに流しこんだりと忙しく動きまわる。

しかし時折、動きがプツリと止まり、それを見かねたもう一人が声をかけて再び動く事が続いている。

当然だ、彼らはもう既に三日間飲食はおろか睡眠すら取っていない。

本来、この場にいる予定だったメンバーの数は7人であった。

メンバーはこの工場の元主任から始まり、一番能力が高いもので戦争及び戦闘用のバトルロイドの基本知能設計者。

低いもので家電修理の経験がある元家庭用家電販売店店員。

他にも従軍経験のあるバトルロイドの管理責任者や、特殊言語が扱えるソフトデザイナーも居た。

しかし今ここにいるのはその内の二人だけ、バトルロイドの基本知能設計者と家庭用家電販売店修理担当者だ。


彼らはいわゆるレジスタンスに属していた。

しかしその本部が敵のロボットたちからの奇襲を受け、致命的な打撃、平たく言えば壊滅してしまった。

命からがら逃げ出したのは本部から少し離れていたロボットたちを研究する施設にいた彼らだけであったが、彼らは研究者だ。

その心にロボットへの復讐の熱意、激情、狂気はあってもそれを果たす力は腕ではなく頭脳の奥にしか無かった。

故に、彼らは逃げるしか無かった。

しかしもはや人類は滅びかけ、最終戦争が起きる前の半分にも満たない数しか残っていなかった。

一体その中に訓練を受けて戦う事ができる人々は一体いくらいるというのか。

もはや人類は己の力のみでその種を保つことができなくなっていた。


「相棒、侵入者だ」


「人間か?」


「残念ロボットだ。もう時間がない、ターレットの残りが50%切っている」


「大丈夫だ、回路は完成したし肉付けも今しがた終わった。後はこいつを溶接して組み込むだけだ」


男たちは非常に落ち着いていた。

それは死を覚悟してるからだろうか、それともこの後の人類の勝利を確信しているからか。

それとも、もう恐怖を感じる心すら砕かれたのか、その表情からはどちらかも分からない。

溶接している道具を置いて、席から立ち上がってそのままカフェにまで休憩しにいってもおかしくない、そんな落ち着いた表情をしていた。


銃撃戦の音がしてくる。

時折してくる爆発音はロボットたちの攻撃のせいか、それともターレットが吹き飛ぶ音か。

おそらくはその両方だろう、彼らの戦闘の仕方は非常に合理的だ。

お陰で奴らが来るまでの時間は非常に正確に図れる、残酷なほどに。



「回路の組み込みも必要なデーターのインストールも終わった、奴らが来る残り時間は?」


「丁度今だ」



扉の外から爆音と閃光が来た。

それと同時に二人の科学者はただの肉片と化す。

もう彼らは何も与えられない、何も与える事ができない。

彼らは死んでしまったのだから、そこには無念しか残らない。

けれど彼らは最後に人類にとって大きな遺産を残す。






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.

..

...

....

.....

......

.......

[スリープ機能正常稼働]


[機能維持確認…異常なし]


[起動シークエンス確認]

.

..

...

....

.....

......

[周囲の生命反応の存在無し]


[自動起動シークエンスに変更]


[戦闘モードを起動します]

......

.....

....

...

..

.

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この日、人類はロボット達に敗北をしていらい、初めての勝利を迎えた事をまだ誰も知らない。

続かない

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